2LDK4人暮らし

2LDKで3歳&0歳姉妹2人と4人暮らし中。早期リタイアに向けて株取引を始めました。

乳海攪拌

アンコールトムの入り口で、ガイドさんが「にゅー かい かく はん」と教えてくれた。

カンボジア語だと思ってぼんやり聞いていたら、

「にゅーは milk かいは sea かくはんは mix」

まさかの日本語。

アンコールトムの入り口の橋にかかっている欄干は、たくさんの像がつながってできているのだが、

それは、アスラ=鬼と神が蛇の胴体を綱引きしている様子とのこと。

なんで綱引きで撹拌されんの?

というか日本人で「かくはん」なんつー単語はぴんとこない人がいるんじゃないのかな。

そういう日本人にあたったときのこのまじめなガイドさんたちの困惑ぶりが目に浮かぶ。

カンボジア観光中、いろんな場所でこの「乳海攪拌」に出くわして、

これはカンボジア人の精神に根付いた物語なんだなと実感した。

最も有名なのはおそらくアンコールワット第一回廊のレリーフ

それからバイロン寺院の入り口

街のいたるところにある橋の欄干

ちなみにあめが持参したガイドブック(ララチッタ)には

紀元前10世紀頃にインドで生まれた

『乳海攪拌』東面南側

ヴィシュヌ神の化身・大亀クールマの上に大マンダラ山を乗せ、これを心棒として神々と阿修羅がナーガを引き合う神話の最後のシーン。

ヴィシュヌ神の左が阿修羅、右が神々。その真上に宙に浮いているラクシュミーの周りにはアプサラの姿も

ヒンドゥー教の天地創造神話。

ビシュヌ神を中心に神と阿修羅が大蛇の胴体をにして引き合い海をかき回し、

乳海となった海から不老不死の薬アムリタができるというもの。

アンコール・ワット第1回廊では50mに渡って描かれている。

そして、乳海攪拌のその後が描かれている

『アムリタを巡る戦い』北面西側 

乳海攪拌で見つかったアムリタを、神と阿修羅が奪い合う様子。21の神々が登場し、激しい乱闘が繰り広げられている。

ブラフマー神が白鳥に乗っている様子も

帰ってからいろいろ調べてみたけれど、インド神話はほんとカオス。

「マハーバーラタ」「ラーマーヤナ」などを筆頭にプラーナ神話などにも乳海攪拌の記述があります。

内容も様々で、とにかくヴィシュヌ神やシヴァ神は信仰度合が増すたびに能力や権力が追加されていくようです。

まあとにかく「乳海攪拌」とはヒンドゥー教の創世神話の一つで、

不老不死の妙薬「アムリタ」を手に入れるために、

マンダラ山を芯棒にして大蛇を巻き付け、

神々と鬼が協力して引っ張り合うことで海を撹拌した、というもの。

カンボジアの乳海攪拌では真ん中で亀の上に乗って采配しています。

この大亀はクールマという、ビシュヌ神の化身のひとつで、衝撃によって世界が崩壊しないよう、芯棒を支えています。

何千年という長い時間かきまぜ続けても、なかなかアムリタは出てきません。

ビシュヌ神はおそらく真ん中でお互いに励ましの言葉をかけているのでしょう。(ええポジションや)

最後、乳海から太陽や月、酒、白馬、宝珠、天女、ラクシュミーなどさまざまなものが生まれ、アムリタも出てきました。

何千年も協力してアムリタを生み出したものの、

やっぱり鬼に渡したくない神々はあの手この手でアムリタを独占しようとします。

最初鬼の手にあったアムリタを、ビシュヌ神が美女に化けてお色気作戦でゆずってもらいます。(ひどい)

まあなんかそんな感じです。

でも日本で仏教がインドそのままの形で伝わっていないように、

カンボジアにもヒンドゥー教はそのままの形ではなく、土着の信仰と結びついて定着したようです。

元々カンボジアには水の精霊としての蛇神ナーガを奉る土着の信仰があり、

ヒマラヤに替わるプノンクーレン高丘、

ガンジス川に替わるシュムリアップ川があった。

アンコールトムは仏教寺院であるにもかかわらず、入り口には乳海攪拌をモチーフとした欄干がある。

土着の信仰とインドの宇宙観があわさり、カンボジアの独自の宗教観ができあがっているのでしょう。

参考文献:アンコール・王たちの物語 石澤良昭 日本放送出版協会

     原典訳マハーバーラタ 上村勝彦訳 筑摩書房

     新訳ラーマーヤナ ヴァールミーキ 中村了昭訳 平凡社

     全訳バーガヴァタプラーナ 美莉亜訳 星雲社